アンフェアな月 [感想]
<あらすじ>
相方で新米刑事の安藤いわく「無駄に美人」で検挙率№1と「被疑者射殺2名」という
記録を同時に持ち合わせる女刑事:雪平夏見。
外見のみならず破天荒な捜査で警察内部には混乱を、世間では注目(非難)を浴びる
が、その行動がいつも突破口を開くので、周囲も文句を言いつつも雪平夏見には一目
置いていた。
今回の雪平夏見が関わる事件は「幼児誘拐」。
資産家とは程遠い母子家庭の0歳児が、家の中から忽然と消え、犯人からの金品の
要求もない。
犯人の目的は?
<感想>
ドラマ化された「推理小説」(ドラマタイトル「アンフェア」)の続編です。
ドラマでは死んでしまった安藤刑事もまだ存命です。
ドラマの印象が強かったので、読んでいる途中も頭の中でドラマのキャストが動いて
ました(^^)
雪平夏見も母親ですが、普段は子供と離れて暮らしてます。
そして子供に嫌われているから、自分も子供を嫌っていると言います。
それでも、子供が危険に晒されれば、なりふり構わず子供を助けに走る自分を知って
母親だと再認識したりするところや(今回のストーリーには直接関係ない部分ですが)
いつも表情を変えず、時として発砲して被疑者の命を奪うことも厭わないので一見、
とても冷徹な人間に見えますが、感情を殺して職務をまっとうする(やり方は破天荒で
も)サマは、ある意味とても素直で人間くさく感じます。
チーム・バチスタの栄光 [感想]
作者:海堂 尊
<あらすじ>
アメリカの心臓専門病院から心臓移植の権威・桐生恭一を臓器統御外科助教授として招いた
東城大学医学部付属病院
彼が作り上げた外科チーム心臓移植の代替手術であるバチスタ手術専門「チーム・バチスタ」
として成功率100%を誇っていた。
ところが3例続けて術中死が発生。
原因不明の術中死とメディアが注目する手術が重なる事態に危機感を抱いた院長・高階は
神経内科万年講師で不定愁訴外来責任者・田口公平に内部調査を依頼
第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作
<感想>
この本を予約した頃、TVでちょうど「バチスタ手術」を題材にした「医龍」というドラマが放送
されていて興味を持ちました。
専門的なことはわかりませんが、とにもかくにも難しい手術のようで、成功率はあまり高くない
ようです。困難な手術ゆえ、1人の優れた外科医が執刀すればいいというものではなく、息の
あったチーム力が成功の鍵を握るようです。
そこにもって100%の成功率を誇る「チーム・バチスタ」は別格の存在です。
タイトルに「チーム・バチスタ」と銘打っていますが、実際の主役は内部調査を任された専門外
の神経内科医である田口公平なので、知識がなくても十分に楽しめます。
次作も是非読んでみたいです
ガール [感想]
作者:奥田 英朗
<あらすじ>
30代OL。
キャリアウーマンと呼ばれ、時には頼られ、時には煙たがられ・・・?
若い後輩達の肌や服装に密かに張り合ってみたり、ブルーになったり・・・。
そんな女性達を前向きに見事に表現している短編集
<感想>
「奥田 英朗は、実は女性だった!!」
と言いたくなるほど、見事に女性(しかも30代OLの微妙な)心理が描かれています。
(・_・。)(._.。)(・_・。)(._.。) ウンウンとうなずきながら、共感しすぎて少しブルーになったり。
それでも最後には明るむ前向きにな登場人物達に感化され、私もがんばろう(^^)Pと
思える楽しい作品でした。
孤宿の人 下 [感想]
作者:宮部みゆき
<あらすじ>
加賀様の下で奉公に勤しむほう。
だが鬼と恐れられた加賀様を預かって以来、病や怪死が多発し「加賀様の仕業だ」と
ますます恐れおののく人々。
思わぬ展開から加賀様に命を救われ、匙や世話役以外で唯一加賀様に接することに
なったほうは、噂とは異なった加賀様を慕う。
藩中では噂を隠れ蓑に、水面下で進行する陰謀。
一体どのような結末を迎えるのだろうか?
<感想>
物を知らないほうのにとっての判断基準は「していいこと」「しなくてはいけないこと」を
し、優しくしてくれる人を思慕するといった極めてシンプルなもの。
なまじ知識や知恵があるが故に物事を複雑にしている?ふと、そんな気さえしました。
生きていくために知識も知恵も必要ではありますが、それを得るために純粋な心と引
き換えにしているのでしょうか?
ラストは「悲しい話にしたい」という宮部先生の思惑どおり涙してしまいました。
コンセント [感想]
作者:田口ランディ
<あらすじ>
餓死後腐乱した兄が発見された。
いわゆる「引きこもり」だった兄が生きることを停止してしまった理由が知りたかった。
そして兄の幻覚を見る理由も・・・。
生前兄がよく話していた映画に登場する「コンセント」をもった少年のことを思い出す。
その「コンセント」とは何を意味するのだろうか?
<感想>
難しい内容でした。
個人的見解によると、自分以外の人にも感応してしまうこと人を「コンセント」と表現
しているみたいです。
主人公のユキは大学で心理学を学んでいたため、当初は病気を疑い感応してしまう
超常的な現象を受け入れることができませんでした。でも、突然そんなことを言われ
たり体験したりしてすんなり受け入れることができる人って、皆無に等しいのでは?
それでも実際自分が体験してしまえば、それはもう事実になる。
その事実を受け入れられなければ、またしても苦しむことになる。
世の中には色々な人がいて、中には自分の価値観では到底理解できない人もいる
かもしれない。だからと言って頭ごなしに否定することで理解できないことを解決しな
いように心がけたいなと思った作品でした。
うちのネコが訴えられました!? -実録ネコ裁判- [感想]
作者:山田タロウ
<あらすじ>
三代にわたり定食屋を営む一家に突然訪れた晴天の霹靂。
故人である一代目充てにある日訴状が届く。
差出人は4~5年前から裏で居酒屋を営む川畑さん。
内容は「おたくのネコにうちの車が傷つけられたので、全塗装費として約100万円を支払え」
といったものだった。
しかし、同封の証拠用と思われる写真に写っている、女の子はうちの娘ではないし、ネコも
うちのネコでもない。
このネコ、サッシを開け、うちのネコの餌を勝手に食べるので、うちのネコと間違われたらしい。
事前の話し合いも持たず、いきなり訴訟を起こされ(しかも勘違いだし)
告訴相手である一代目はいない(故人だし)
緊急家族会議の結果、口下手・面倒くさがりの二代目ではなく、家族で一番弁が立つ三代目・
タロウが受けて立つことに。
こうして前代未聞のネコ裁判(実録)が始まった。
<あらすじ>
この本、いわゆるブログ本。
私は知らなかったのですが、内容が面白そうだったので図書館で予約を入れてやっと回って
きました。
モトがブログということで、ブログをイメージしてるように横書きで読みやすかったです。
それに文章が上手にかけていましたし(^^)
なので、ついつい読み続け、気づいたら明け方4時・・・。か、会社行かなきゃなのにー(^^;)
体験したことがない裁判ってこうやってするものなんだ、という大まかなことがわかりましたし
まぁ、世の中色々な人がいるんだなーって(^^;;
総評は面白かったです。(今更??)
それと、続きがブログで読めるみたいですよ~
縁切り神社 [感想]
作者:田口 ランディ
<あらすじ>
縁切り神社で多数ある絵馬に自分と1ヶ月前まで付き合っていた男の名前があった。
「水野季実子と深田拓也の悪縁が切れますように」
自分達の別れを祈願していた人物の存在にぞっとした。(「縁切り神社」)
他数篇からなる短編集。
再会
悲しい夢
アイシテル
夜桜
夜と月と波
縁切り神社
世界中の男の子をお守りください
島の思い出
どぜう、泣く
恋人たち
エイプリルフールの女
真実の死
<感想>
著者の作品を読むのは初めてです。
今までは何となくブーム的な感じがしていたので、敬遠していましたがいつもは予約して
カウンターで受け取りだけをしている図書館を久々に館内をブラブラしていて見つけました。
まずはタイトルに惹かれ、パラパラとめくってみると短編集で読みやすそう~となんとなく
借りてみました。
数篇にでてくる「自分は振られた」感を持つ主人公が、別れた相手と話をする機会があって
「お前に愛されてないと思ったから別れを切り出した」といった内容に愕然とするシーンがあ
るのですが、このくだりにとても人間らしさ、リアリティを感じてしまったのです。
本気で好きになった相手もいれば、寂しさを紛らわせたいときに出会った相手と付き合って
しまう。意識するかしないかは別として、そんなこともあると思うのです。
それを隠したり、ごまかしたりせずストレートに作品に出してしまう著者に現代を感じ興味を
持ちました。
ちなみに私が一番気に入った作品は「世界中の男の子をお守りください」でした(^^)
スローなブキにしてくれ [感想]
作者:片岡義男
<あらすじ>
短編集
・スローなブギにしてくれ
バイク好きな少年と猫が好きな少女の話
・モンスター・ライド
1人のバイカーの事故とその仲間達の話
・ハートブレイクなんて、へっちゃら
海辺のバーの電話を介して知り合った男女の話
・マーマレードの朝
接待のお供で訪れた店で知り合ったサラリーマンとホステスの話
・さしむかいラブソング
バイク好きな青年と少女の話
<感想>
♪Want you オレの肩を 抱きしめてくれ~♪(スローなブギにしてくれ-I want you
/南佳孝)ある日、突然このフレーズが頭に浮かんで以来、頭から離れなくなりました。
この曲はタイトルになっている「スローなブギにしてくれ」(浅野温子主演)が映画化され
た際の主題歌だったので、読んでみることにしました。
著者はバイクに対する思い入れの深さを物語るかのように、バイクの詳細な描写も多く、
バイクに詳しくない私には理解できない箇所が・・・。
バイク好きでないのに片岡義男作品を読むからだー!と言われてしまえば返す言葉も
ないのですが・・・(・Θ・;)アセアセ…
私が知っている他の作品イメージからスタイリッシュなイメージが強かったので、初期の
作品は随分イメージが違ったんだなーという感想でした。
作品も若かったということなのでしょうか?
エンド・ゲーム-常野物語 [感想]
作者:恩田 陸
<あらすじ>
強力な力を持つ両親の間に生まれた時子。
だが強力な力を持つ父も時子が幼いときに突然いなくなってしまった。
冷蔵庫には「何かあったときにはここに電話をしなさい」と言われていた電話番号を記したメモが
ずっとマグネットで貼ってあったのに、母は電話をしないまま時子は大学生になっていた。
そのメモがなくなり、母が倒れ原因不明の昏睡状態に・・・。
父も母も「裏返されて」しまったのだろうか?
何もわからない時子は、すっかり暗記をしてしまったあの電話番号に電話をかける。
常野物語の3冊目
<感想>
常野物語の完結篇感がありました。
ですが、正直シリーズの中で一番面白く感じたのは「光の帝国」でした。
この作品は登場人物達が持つ力とは何か?を考えていくうち物語の物語になってしまって、ちょ
っとスッキリしませんでした。
まぁ、私の読解力に問題があるのかも知れませんが・・・(T▽T)
魔女の笑窪 [感想]
作者:大沢在昌
<あらすじ>
脱走するのは不可能といわれていた地獄島から過去に2人だけ脱走に成功した者がいた。
そのうちの1人である主人公は、裏のビジネスで成功者となった。
それでも、脱走者を許さない地獄島に自分の存在が知れることを恐れ、他人に過去を語る
ことはしなかった。
だが、人と接すれば何かしら関わりができてしまう。
それが巡ってついに自分の存在が地獄島に知れることとなり・・・。
<感想>
作者の作品で「天使の牙」「天使の爪」が好きです。
美人なのにタフ、だけど突き進むだけでなく恐怖心も持っている女性を描くのがとてもうまいと
思っているので今回の作品も楽しみでした。
そう、今回も主人公は女性なのです。
地獄島という場所で何千という男性の相手をさせられる日々を過ごすうち気力を失うか、心が
壊れてしまう女性が大半いる中で、主人公は強靭な精神力を持って脱走に成功しました。
なのに居場所を知られて過去の記憶が蘇り、恐怖を覚えます。
迫りくる恐怖を克服するためにギリギリまで体を痛めつけ、恐怖に打ち勝とうとする姿はスゴイ。
極限まで追い詰められて、逃げてしまうか挑んでいけるかの選択を迫られた時に精神力の強さ
が出るのでしょう。
私は多分逃げてしまう口だと思うんですが、極力こういう選択に迫られる事態に遭遇しないこと
を祈りたいです。